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「謎深き庭─龍安寺石庭」を巡る「五十五の推理」を紹介していきます。
謎解き庭 龍安寺石庭

「三つの謎」に挑む

「三つの謎」に挑む

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世界遺産、京都の龍安寺に、日本庭園史に燦然と輝く枯山水の庭がある。その名は石庭。方丈の前面に白砂を敷き、大小十五の石を五群に分けて配置した、百坪足らずの小宇宙である。

この小宇宙には、突き詰めると三つの謎がある。

  • 一「テーマ」─石庭は何をテーマに設計されたのか。
  • 二「五群十五石」─五つの石組と十五の石は何を意味しているのか。
  • 三「秘密の構図」─石を配置するとき、どのような構図(美的秩序)に基づいたのか。

古来、多くの識者が推理を重ね、「虎の子渡しの庭」「七五三の庭」「心の字の庭」「扇の庭」「星座カシオペヤの庭」「五山の庭」「黄金比の庭」を初めとして、「五十五もの推理」が提唱されてきた。一つの庭園を舞台にして、これほど多くの説が生まれるケースは、日本国内だけではなく、世界的に見ても極めて異例である。

そのため、近年では、「禅の庭」「哲学の庭」「推理の庭」など、特別な名前で呼ばれる場合も少なくない。

このウェブサイトは「謎深き庭─龍安寺石庭」を巡る「五十五の推理」に焦点を合わせる。

「虎の子渡し」の説話

「虎の子渡し」の説話

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『広辞苑』はこう記す──。 虎の子渡し。虎が三子を生むと、一子は彪で他子を食うので、水を渡るときまず彪の一子を渡し、次に別の子を渡して、また彪を渡し返し、さらに残りの一子を渡し、最後に再び彪を渡したという説話にもとづく。

  • 一「苦しい生計をやりくりするたとえ」。
  • 二「碁石を用いて行う一種の遊戯」。
  • 三「京都龍安寺の石庭の異称」──。

末尾の「京都龍安寺の石庭の異称」という記述が示すように、龍安寺と虎の子渡しとは、もはや切っても切り離せない一体不可分の関係になっている。

説話の原典は、中国・南宋の末期から元の初期に活躍した文人、周密(一二三二─九八)編の『癸辛雜識』に記載された「虎引彪渡水」(虎が彪をつれて水を渡る)。三子を持つ親虎が、こちら岸から向こう岸に渡るとき、性格が荒い彪(=ひょう。皮に鮮やかな模様のある虎)を他の子と一緒に残さないように智恵を絞ると、親は川を三往復半しなければならない。

「虎の子渡し」状態図

            

なお、図[癸辛雑識の虎の子渡し]に描いた虎と彪の姿は、白川静『字解』に掲載された古代文字を引用した。